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母で主婦で会社員の中年のもろもろの記録

「ポーの一族」展

今日、松屋銀座で開催されている、萩尾望都先生デビュー50周年「ポーの一族」展に行ってきました。

予想以上に盛況で、日曜ということもありますが、大変な混雑に驚きました。そして予想以上の見応えに感無量でした。

見終わるのに2時間かかったという話を友人から聞いていて、ウソだろと思っていましたが、3時間近く要しました。

混んでいたのもありますが、展示がものすごい量と密度でした。

あまりに胸が一杯になってしまったので、「ポーの一族」と萩尾先生の作品について想いの丈を書き留めておきます。

けっこう気持ち悪いと思います。最初に断っておきます。

 

私が萩尾先生の漫画を初めて読んだのは多分小学校3年生か4年生ごろ、9歳か10歳ぐらいだったと思います。

当時、同じクラスの友達と2人で、毎週土曜の午後に地元の図書館に行くのが習慣で、主に漫画と少女小説コバルト文庫とかだったと思う)を読んでいました。

小学生時代、特に低学年ごろのわたしは本の虫で、母が集めた「少年少女世界の名作文学」とハイファンタジーゲド戦記やエンデ、も少し後で指輪物語など)を読み漁っておりました。漫画にはまったのはその後です。

その図書館には、いわゆる24年組の作家さんの漫画がかなり豊富に揃っていました。

萩尾先生のメジャーな作品はほぼ全て図書館で読破しましたし、「風と木の詩地球へ…日出処の天子」「綿の国星」などなど…もっともっとありますが、夢中で読みました。

もともとの読者の世代が完全に違うので、まわりの友達とは誰ともこの楽しみを共有できませんでしたが、少女漫画の歴史上たいへん重要な作品群だということも、「少女マンガ入門」を読んで知りました。

今振り返ると、わたしはちょっと変わったこどもだったと思いますが、これらはどれも文句なしの名作です。

その中でも萩尾さんの「ポーの一族」と「トーマの心臓」は、わたしにとっては今でも特別な作品です。

トーマの心臓」なんて、図書館から家に帰り着いて上着も脱がず、貪るように読み終わったときの興奮がいまでも鮮明に蘇るほどです。

正直、この作品を当時完全に理解できていたとは思えませんが、読了したときの鳥肌、西日でオレンジになった和室で、しばらくぼーっと胸がいっぱいだったこと、…なんかを懐かしく思い出します。

さて、そんな思い出を30年近く温めながらおばさんになったわたしです。「ポーの一族」展、本当に行ってよかったです。幸せでした。「トーマの心臓」の原画も多数展示されていたし、その他の作品や、萩尾さんのインタビュー映像などもあり、すごいボリュームでした。

ポーの一族」は、時代と場所が異なる短編・中編・長編が、時系列バラバラに展開しますが、展示された原画はどのページも隅々まで覚えていて、我ながら驚きました。

実は今現在この作品は手元に持っていないのですが、何度もなんども読んだので、もう身体の一部みたいになっているのだと思います。

萩尾先生は50年も描き続けておられる方なので、作品の数も多くて、わたしはSF作品も大好きです。「マージナル」「銀の三角」など、萩尾先生にしか描けない、完成度の高い作品です。

漫画は今でも好きで、といってもそれほどたくさん読んでいるわけでもないですが、物語の面白さや語り方の個性や、絵が綺麗とかコマ割うまいなーとか、テーマや構成が優れているとか、そういった個々の要素で好きな作品はちょくちょくあります。

でも、それらの調和とかその先の芸術的価値というか…言葉にするのが難しいのですが、そういう観点で、萩尾先生の作品以上のクオリティに出会うことはないんだろうなという気がします。

まあ、ここ数年は何かを読む時間も、書店に立ち寄る時間も皆無です。なので、萩尾先生が描き続けておられるのは知っていたものの、「ポーの一族」の続編が40年ぶりに連載・発売されていたことも数ヶ月前に知ったのですが…

実はいま、小学1年生の娘が、初めての長い夏休みで大阪の実家に世話になっています。3週間以上不在になる予定です。

そういうわけで、この高揚した気分のまま、「春の夢」と「ユニコーン」を読もうと思います。この夏は心ゆくまで漫画を堪能する予定です。

エドガーとアラン、萩尾先生ありがとう。