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母で主婦で会社員の中年のもろもろの記録

科警研

f:id:xxchihayaxx:20191208233953j:plain先日、こちらセミナーに行ってきました。公務研究セミナー人事院が取りまとめていて、各省庁が同様の説明会を開催しています。参加者として国家公務員を志す大学院生及び大学生を想定しています。公務員試験を視野に入れたことが一度もなかったので知りませんでしたが、来年の春受験する学生たちが、この時期に動いているのでしょう。
わたしは学生でも公務員でもない中年の会社員ですが、マニアックな好奇心からぜひ話を聞いてみたく、当日の朝、念のため科警研に電話して、「参加者は学生に限定していない」ことを確認しました。
せっかく足を運んだので、記録を残しておこうと思って記事にします。

前半30分程度、科警研の組織や業務内容のざっくりした紹介を、研究職ではない事務方の職員がされました。この方は鹿児島県警から出向中という50代ぐらいの警察官でした。単身赴任とのことでした。

後半は、爆発研究室所属の採用3年目の男性研究員が、ご自身の業務内容や研究の特徴、試験や官庁訪問経験談など、もう少し突っ込んだ話をされました。

会議室は広く、詰め込めば100名程度は入りそうでしたが、参加人数はわたしを含め16名でした。すくなっと思いました。リクルートスーツぽい方が大半でしたが、私服の方もいました。わたしは目立たないよう黒スーツでおとなしくしておりました。

以下、科警研のHPやwikiにある情報は割愛し、メモと記憶をたよりに箇条書きで紹介します。 わたしは書くのが遅いので、PCでタイプしながら聴きましたが、誤記や不正確な情報が含まれている可能性があることをご了承ください。

 

警察管から*********
科警研職員は127名。うち、108(107)名が研究者。うち64(66)名が学位(博士)を取得している。
(注:人数は、事務方警察官と研究員のスライドで若干の誤差があったため併記しています。()が研究員が示した数字です。)

◆学位をもつ職員の8割が採用後に学位を取得。様々なケース(大学週2で通学・夕方から通学・論文のみなど)があり柔軟に対応している

◆今年、法科学第二部に知能工学研究室を新設⇒研究室の数は24に
⇒業務の例) 邦人拘束時の画像の解析など(捏造画像ではないかの鑑定など)
(注:科学警察研究所の各部の内部組織に関する規則(2019/4/1交付)より抜粋
   知能工学研究室においては、次に掲げる事務をつかさどる。
   一 犯罪の捜査に関連する情報工学及び画像工学の研究及び実験に関すること。
   二 情報工学及び画像工学を応用する鑑定及び検査に関すること。)

科警研の仕事
・研究
 ⇒特別研究(予算規模数千万):2課題, 経常研究:60課題
 ⇒科研費(文科省)による研究:52課題, 大学共同研究:63課題 
 ⇒特許申請は年間数件
 ⇒6割が研究員自ら立案する研究課題・4割が現場警察からの要請研究
・鑑定/調査(平成30年度は約2,000件)
 ⇒例)サリン, シンドラー社エレベータ, シリア邦人殺害事件声の鑑定, 京都アニメーション(現地に火災研究室の職員)
・研修/指導
 ⇒全国の科捜研職員への研修:50課題約700人

◆施設(柏)について
⇒食堂がよい(注:警察官言:単身赴任なので一日の全エネルギーをここで摂取だそうです)
⇒図書室の専門書7万冊・図書購入費年間予算:3,800万

◆採用後は研究室の異動はほぼないが、兼務または近似の研究内容の室へ希望して移るなどはあり得る

キャリアパス
⇒各都道府県の科捜研に出向する場合は所長職
科警研に戻ると室長→部長→副所長まで出世は可能(注:wikiでは所長は技官とあります。別枠のようです。法医学が専門の医師が歴任されている様子?)

◆女性
⇒20名,部長職2名。歓迎。

◆付属鑑定所ではDNAと硬貨の鑑定を集中的に行う。研究室員が数年間付属鑑定所で勤務する。

◆研究対象がレア
⇒被疑者の情報に触れられる(人文系)
⇒危険物を対象とした研究が可能

 

3年目研究職員から*********
法科学第二部_爆発研究室_3年目(大学時の専攻は化学(ナノテク・材料化学)・男性・出身大学不明。ほのぼのした雰囲気の方でした。)

◆爆発研究室の紹介・業務内容
⇒「爆発」(事件性のある)という現象に関連することはすべて扱う
⇒爆発事故 事故現場での調査と原因究明
⇒爆発物使用事故…爆発前)処理に関する助言 ⇒爆発後)鑑定
⇒現場に出向く…・海外の爆発事故、事件に邦人が巻き込まれたケースなどに科警研職員が出向くことがある。試料が送付されてくることもある。
化学分析機械
野外実験
破片速度度計測
爆風圧計測

◆国家公務員総合職試験
⇒M2のとき、化学・生物・薬学で落ちた(自分の専攻に合致した区分を選択しないとダメ)
⇒D1のとき工学で合格

官庁訪問
⇒D1;総務省(?)で研究職の方が向いているのではと言われた
⇒D2;厚労省(?)で研究職の方が向いているのではと言われた⇒科警研第一クール3日目に訪問、面接で研究職向きだと自分でも思った

◆学位(この人の場合)
博士2年で採用が決まり、採用後しばらくは仕事に集中したかったので半年休学し、博士3年目で論文書いて学位取得。

科警研の特徴
⇒一室あたり3~4名。若いうちから責任ある仕事ができる
⇒施設が充実、特殊実験施設・装置(分析装置・PC)など足りないことがない
⇒転勤がないが出張はある(注:彼はあちこち行きたかったそうだ)
⇒大学時の専門にとらわれなくてよい
⇒採用後でも(室にもよるが)学位取得を後押してくれる(彼は博士2年まで大学にいたのでもったいないと推奨されたとのこと)。
⇒レクが多い。職員同士交流もある。参加しない人もいる。
⇒学会では研究者と、研修では科捜研の研究員と、鑑定では警察官と接点があり色々な人と接点がある
⇒専門家になるため日々勉強が必要。大学と違ってその分野まるごと(爆発研究室なら爆発に関することはなんでも)なので大変ではある
⇒色々な立場が要求される(公務員・警察職員・研究者・鑑定員)
⇒自分のペースで仕事ができる。机がでかくて(L字)パーテーションがあり自分のスペース
⇒体育祭・文化祭などあり
⇒大学などに出張あり

◆研修
⇒科捜研職員への教養
⇒警察官への教養

◆研究
⇒2-3年の研究計画、研究テーマは比較的自由
⇒専門知識は入所してから学べばよい(大学時専門はナノテクだったが今は違うことしてる)。基礎から勉強できる。
⇒成果は学会発表するが、ノルマはない。発表しなくても情報収集で行かせてもらえる。1年目から学会発表する人もいる。
⇒研究成果が科捜研の研修に取り入れられることもある
⇒予算は科研費の外部資金に応募することもできる
⇒研究職なので自由はある。大学時代とあまり変わらない
⇒業務の構成は研究:研修:鑑定=4割:4割:1割(研究室による。研修をあまり持っていない室もある)
⇒3月に所内の成果発表がある
⇒月1でゼミ、年1ぐらいであたる

◆定時は9:30-18:15、12:00-13:00昼、フレックスの人もいる。研究職の服装は自由。

 

質疑*********

※採用実績※

◆30年度:2名
⇒化学第三 化学生物薬学
情報科学第三 工学

◆31年度:4名
⇒機械 工学
⇒化学第二 化学生物薬学
情報科学第一 人間科学
⇒交通科学 工学

◆令和2年:解禁日は3/1だがほぼ決まっている。
(注:セミナーで言うぐらいなので極秘というわけではないと思いますが、人数を知りたい方はコメントなどでお知らせください。)

*********

レポはおおかたこんなところです。総合職の試験区分をメモしておきます(数字は来年度採用予定数)。科警研の採用は、工学/化学・生物・薬学/数理科学・物理・地球科学/人間科学 ぐらいかと思われます。
・行政(院卒区分)60 
・政治・国際(大卒区分) 30
・法律(大卒区分) 160
・経済(大卒区分) 65
・人間科学 30
・工学 170
・数理科学・物理・地球科学 25
・化学・生物・薬学 40
・農業科学・水産 55
・農業農村工学 20
・森林・自然環境 30

 

雑記と感想********* 

このセミナー情報を知ったのは1週間ほど前でしたが、参加を思いたったのは当日の朝です。行きたいなーとは思っていましたが、平日だし、学生対象だろうし、本気で計画たててたわけではなかった。が、当日の朝、娘を小学校に送り出してから急に気が変わりました。柏は遠いが霞ヶ関なら1時間弱だし、この先合同庁舎に入館する機会もないであろうと。

月曜は在宅勤務にしていますが、娘の帰宅時刻を考えると、行くなら初回(10:15~)しか無理なので、慌てて身支度してスーツ着て電車に飛び乗ってから会社に午前休の連絡を入れました。

霞が関といえば、まだ大阪で働いていた20代のころ、PMDAの適合性書面調査というもののために、出張で新霞が関ビルに3日間籠りました。それ以来全く縁のない場所です。

霞ヶ関駅と合同庁舎2号館は地下でも直結しており、3A改札を出てすぐのビル入口にセキュリティゲートがあります。ここは警備員3人体制でした。ここで、「入館者受付票」に、訪問先省庁や目的、自身の氏名や住所を記入し、身分証を提示のうえ、セキュリティカードを借りてゲートを通らねばなりません。「事前登録」というものを行っていない場合、警備のおじさんが訪問先に電話し、1件ずつ確認を取ったうえでカードが手渡されます。時間帯によっては相当な列ができることでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
わたしはもちろん「事前登録」をしていませんでしたが、部外者に公開するセミナーなどの情報は警備に共有されているようで、警備から担当者への簡単な電話ですんなり入れました。1Fロビーでセミナーの案内を掲げた女性が立っていて、すぐに別の若い男性が来られ案内していただけました。
ちなみに、警察庁は中央合同庁舎2号館の一番上から4フロア、16-20Fです。もしかして入れるかも、とかすかに期待していましたが、残念ながらセミナー会場は地下会議室でした。上記ページにも記載のとおり、警察庁フロアへ入るには、さらに2Fのセキュリティゲートを通る必要があります。この受付にも警備員が2名ほどいました(セミナー後見に行った)。

さて、およそ90分のセミナーを聞いていて、研究職としてはたいへん恵まれた職場であろうと感じました。
理系の院生が民間企業に就職する場合、研究職であっても、それまでのような研究が続けられるかというと難しいと思います。大学に残っても、よほど優秀でない限り待遇はバイト並というのがザラな印象です。
安定した公務員の待遇で、比較的自由度の高い研究を続けられる、というのは、研究職志望の学生さんにはよい話ではないかと。もちろん大学時の研究がそのままできるわけではなく、警察や社会に貢献することを最終目的とする研究ということになるのでしょう。それもまた、大きな意義が感じられてよいとわたしは思いました。
当然ながら国家総合職試験を突破することが大前提ですが、事務系の区分と違って、官庁訪問で出身大学を気にする空気はなさそう。警察庁などは毎年15名程度の入庁者のうち過半数が東大法出身なので、その他というだけで肩身が狭そうですし、出世レースにも影響しそうですが、研究機関はそんなこと気にしないのではないでしょうか。
 
以上、レポートおわり。