秘密
タイトルは清水玲子先生の少女漫画のタイトルです。
わたしは漫画(少女漫画)がわりと好きなのですが、「ポーの一族」の記事でも少し書いたように、ここ20年以上ほとんど触れることもなく遠ざかっていました。
ところが漫画も、電子版というものの恩恵で、娘を寝かせた後の真っ暗なベッドでも楽しめます。とても便利。
そのおかげというかなんというか、この夏、清水玲子先生の「秘密」を読んでハマりましたので、そのことについて熱く語ります。
清水先生といえばベテランでいらっしゃいます。「輝夜姫」「月の子」ジャックとエレナシリーズなどが代表作です。
中学?高校生ごろ?にリアルタイムで「輝夜姫」をLaLaで立ち読み(←)していました。20年前ぐらい。
清水先生って絵が本当に綺麗で、カラーなんてもう溜息しか出ない、そんな作家さんです。今も20年前と画が変わっていません。
「輝夜姫」も「月の子」も、SFで発想が抜群にシュールで、物語のスケールが壮大で面白いのだけど、展開とオチに妙な突っ込みどころがある印象(すみませんごめんなさい)で、これまでそれほど読み込んだ作品がありませんでした。
あ、でも「22XX」はすごいです。泣きました。
ところが今さら、20年も経って、こんなにどっぷり浸かれる漫画に出会うなんて、我ながらびっくりです。
「秘密」ってもう20年近く描かれていて、「輝夜姫」の終盤時期にはもう連載が始まっていたようです。
アニメにも実写映画にもなっていたのに、全然知りませんでした。勿体ないことをしました。アニメも映画も評価が散々なので見ませんが。
この作品は、死者の脳から記憶を映像として再現できるという設定の、近未来の日本警察を舞台にしたSFサスペンスです。
ちょっとグロくて、展開や設定に細かい突っ込みどころはあるのですが…なんか…読ませるんです。盛り上げ方、読者の引き込み方が清水先生ならでは。細かいところすっ飛ばしても読み止められない中毒性があります。やはりお上手というか職人技というか、さすがです。
サスペンスといっても、事件の謎解きよりも登場人物の心情や社会的なテーマに重きが置かれています。
人間の弱さ醜さ美しさを重苦しいテーマにのせて、美しい画と独特の展開で、ドラマチックかつ抒情的にお届け。そんな作品です。基本的にどのストーリーも切なく、読後は「……」となります。
清水先生の作品はどれもわりと後味が悪く、「秘密」も例外ではないので、そこは好みが分かれるところかもしれません。
そして主人公が、おばさんには堪らない麗しさ。そこは少女漫画です。東法卒の警察官僚で、突出した頭脳の持主で、未成年にしか見えない美貌の中年で、モデルはhydeだそうです。ぴくっときた方は即読みましょう。
もう一人の主人公(?)は、イケメンなのかモブ顔なのか微妙な、こちらもキャリアのアラサー警察官(雑…)です。
薄い本が沸く要素も巧みに散りばめられており、いろんな楽しみ方ができます。こういうところも清水先生は天才的…。
好みもあるでしょうが、20年近く続いていながら、わたしのような新規読者を獲得し続けている作品なので、未読の方はぜひ。